スピる
先日仕事で横浜中華街へ行った。
時間があったのと人生に迷いまくっていることから路地に並ぶ占い、占い、占いの文字がやたらと目についた。
占わねばなるまい。
半ば使命感にも似た確信を持って生まれて初めての占い屋さんに入った。
占い、まじ占い。まじすげー。
なにがすげーって、占い関係ねぇー!
大好きだった人にフラれて〜と包み隠さず今の状況を占い師さんに伝えたら、「彼の中ではもう答えが出ていて、あなたと別れると決めたのだからそれはひっくり返せない」的なことを言われた。
占い関係ねぇー!
それ、占い師さんの人生観から出た言葉! つーか、まだなにも占ってねぇー!
まじですげーや!
要するに、占い師さん的にも責任の所在が明らかになるようなことは言えないんだな。「復縁できますよ」とか安易に言ったとして、そうならなかった場合のクレームをどうする?的なのが透けて見えた。やっば!
まぁ聞きながらそれもそうか、といやに冷静な自分もいた。
なんか生まれ年とかから数字を出して星のめぐりだかなんだかを占ってくれるやつだった。8つある星のなんちゃら〜、おそらく天命みたいなもの、ひとつしか合ってなかった。同じ星がたくさんあるほうが気が合うらしい。
「なんでこの人に惹かれたの?」と聞かれた。こっちが知りたい。
好きになったもんは好きになってしまったのでしょうがないじゃないか。理由なんて、あるにはあるけど、まじで意味わからない。
好きにならずに済んだのなら好きになりたくなんてなかったっての。
で、あなたは生まれ持った運がとにかくとてもいいから、なんかがんばれってさ。やっぱり? 運がいいと思ってたんだよね。まじで。むちゃくちゃ星めぐりいいって話。それでも失恋するんだから人生に運とか関係なくない? ウケる。
占いしてもらったら、そうなんだ〜とか思って心が若干軽くなった。
気が合うとかじゃなくて体が惹かれあったんでしょとか、気が合うではなくても相性はいいとか、いろいろと言ってくれた。相性はいいんだと思った。それは納得できた。
そんでその日の仕事が早く終わったものだから、自宅の最寄り駅まで帰ってもう一店占いに行った。占いのセカンドオピニオンである。ウケる。
阿呆ほど待たされて順番が来ると、最初のお店と同じように生年月日とかを書いて数字や星のめぐりを出してもらう。そこは数字だから同じ。
「なんでこの人に惹かれたの?」
それがわからないと言われた。ウケる。
確かに、普通にしてたら好きにならない。だって好きとかそういう次元の人じゃなかった。好きになるリアリティもなかった。同じ地続きの世界に住んでいる人と認識してなかったし。
やっぱり相性はよかった。フラれたのに、フラれたあとに相性がいいと言われても、あーそれは純粋な未練に転化してしまうよと思った。
二店目ではタロット占いも用いて、他にもいろいろと話してくれた。
この中のカードからピンと来るものを一枚選ぶとか。羊を首に巻いてる男の人の絵を選んだ。それは「わたしに優しくして」という意味らしい。
なるほど、わかる。わたしはめっちゃ疲れてる。
あの人に優しくして欲しかった。それに優しくしたかった。
優しく声をかけて、今なにに悩んでいるのか、なにを望んでいるのか知りたかった。わたしにできることはなんでもしたかった。
今なら思う。引き換えられるならなんだって差し出す。あの人がわたしを好きになるならば、なにを失ってもよかった。失うだけでなく、なにを負っても、なにを与えても、あの人以外にはいらないと思った。
問題のタロットカードは、さすが占い師さんって感じだった。
わたしの欲しい言葉を的確に話してくれた。
復縁したいと言えば、復縁に道があると言ってくれる。
でも相手に新しい彼女がいると言ったら、うまくいってないなどと言ってくれる。そんなわけない。
もうめっちゃ好きやねん!って言ってた。あんなに好きという感情を表に出せる人だと思ってなかった。それくらい今の彼女を好きなんだろう。そこまで好きになった人をあの人が大事にしないわけない。付き合ったあとわたしと2回も寝たけどな。
不思議なことに、占いのお店をあとにするときは心が軽かった。現実世界ではなにも変わってないし、進展もないのに。前を向くという言葉の通りに、前を向いて歩き出せたように感じた。
占い二店ハシゴで、1日に7500円使った。
それだけの価値はあった。
自分が欲しい言葉を言ってもらって、そんな都合のいいことが起こるわけがないと冷静になれた。自分の妄想は夢物語なんだと思った。
早く別れろ。今の彼女と。
むちゃくちゃなクズ野郎じゃないか。
そんなあんたをそのまま愛せるのはわたしだけなんじゃないの?
あんたはわたしを好きにはならないだろうが、わたしはまだ好きだ。
あんたの気持ちなどどうでもいいくらいに、愛したくてたまらない。愛することより、愛されることを選んでくれ。
あんたは人を好きになることに向いてない。いい加減気づけ。
あんたは人の愛情の重さを嗅ぐ癖がある。思うように愛してくれる人を見つけようとしている。あんたが好きなのは自分自身だよ。
それならわたしを選んでくれ。
あんたの思うように、あんたを愛するよ。
だってもう、ずっと好きだ。
あきらめようなんて思っても、無理だ。
今これを書いているときだって、あんたが彼女と会っているんじゃないかと嫉妬で気が狂いそう。あんたの生活すべてを奪いたい。
こういう独占欲を自分が持っているなんて思いもしなかった。わたしは醜い。
それでも、あなたが優しくしてくれるなら、あなたの心の形に、あなたの求める愛の形にわたしはなるよ。
好きだ。好きで好きで好き。
支離滅裂だけど、好きって気持ちだけは確固たるわたしの気持ちだ。